1.最高の繭作り
これまでタイのシルクはヨコ糸にこそタイ原産の繭を使用していましたが、タテ糸には繭の品質上、タイ原産種を使うことが困難とされ、そのほとんどを輸入品に頼っていました。これは繭からとれる糸が太すぎて、均一な繊度を要求されるタテ糸には向いていなかったためです。
しかし、2003年12月、タイ政府農業省シリキット女王養蚕研究局の支援プロジェクトによって生まれた新種蚕「No.11」からタテ糸にも使える絹糸を生産することに成功しました。この新種蚕「No.11」が吐き出す糸の重さは9000mでわずか2.4gという軽さ、そして今までのタイ及び隣接諸国で生産されるものとは異なり、一個の繭から1200mもの高品質な生糸をとることができます。なお、この繭の改良には世界最高と呼ばれる日本の養蚕技術が活かされており、
本種「No.11」はタイ蚕種に日本蚕種を掛け合わせることにより生まれました。
そして現在この糸はタイ国王室内に設立されたGolden jubilee Royal Goldsmith Collegeに納められこれまでのタイシルクにはない、しなやかで光沢のあるオリジナルタイシルクの開発にも成功しています。
*本種「No.11」は現在も更なる品種改良が進められていますが、私達が生産する全ての製品にはその流れを汲むオリジナル蚕種が使用されています。
2.最高の生産方法
あらゆる繊維の中で最も美しく、優雅と謳われるシルク
最も贅沢なシルクの生産方法 <生繭びき(なままゆびき)
一般的なシルク(日本、中国、ブラジル産等)は、熱乾燥(120℃~60℃の熱風を6時間程度)された繭から糸をひいて生産します。熱乾燥させることで、サナギの羽化抑制、カビの発生防止、サナギの腐敗防止効果があり、長期保存することができるのです。しかし高温で乾燥した繭はその主成分であるタンパク質が熱で変質し、艶や弾力性が落ちてくることがあります。
もちろん熱乾燥しない繭からシルクを生産することは可能ですが、原料となる繭の調達やその品質管理に多大なる労力とコストが必要になってくるため、現在の市場ではほとんど見ることができなくなりました。
しかし、私達は繭が持つ自然な風合いを活かすため、繭を長時間熱乾燥することなく糸をひく(生繭びき)という大変贅沢な方法でシルクを生産しています。この方法によれば繭に余計な熱をかける必要がなく、また柔らかな張力で糸をひくことができるため、熱乾燥させたものと比べて弾性に優れ、大変優雅で美しいしなやかさが出てくるのです。
3.最高の輝き
黄金の輝きを放つNo.11
絹は他の繊維にない大変美しい輝きを持っています。その秘密は糸の断面形状にあります。セリシン(繊維を包んでいるたんぱく質)を除去したあとのフィブロイン(たんぱく質からできている繊維)は、おむすび型や楕円型の形状をしています。光があたると光線はフィブロインの内部に入り複雑な屈折と反射を繰り返し外に出ます。これが絹のつややかな光沢となって現れます。さらにフィブロインはフィブリルというさらに細い繊維が集まってできており、当たった光が表面だけでなく、内部に到達し、複雑な反射・屈折・分光などの現象がおきて、外部に出る光をより複雑なものとしているのです。
さらにこのゴールデンシルクNo.11は上記の特性に加えてカロチノイド系色素(ニンジンやカボチャの色などを出す天然色素)を持っているため天然の状態で鮮やかな黄金色をしています。この黄金色の生糸は精練(セリシンを取り除く作業)することによって、その色を徐々に薄くし、最後には美しい光沢を放つ柔らかなキナリ色の糸となるのです。
4.人と自然環境を重視した生産背景
私たちの取り組み
わたしたちは現在タイ国内6ヶ所の農村地域と提携し、合わせて120万㎡(36万坪)の敷地で桑畑からの糸作りに取り組んでいます。これまでにタイ政府農業省シリキット女王養蚕研究局支援の下、畑の開墾、桑の植林、蚕室や蚕具の整備、養蚕技術指導等を行なってきました。そして、そこで生産された繭は品質に応じた適正な価格ですべて買い取る「全量買取保障」を実践し、農村地域における雇用拡大と収入の安定化を目指して参りました。今後さらに遊休地や荒廃地を利用し、植林を進め、人と自然環境に優しい生産を目指します。そしてこのプロジェクトにかかわるすべての人たちのために、「誇りを持ったものづくり」ができる環境を整えること、それが私たちの役割であると考えます。